トリリンガルの育て方

 

 乳幼児を対象とした英会話教室の宣伝に必ずと言っていいほどでてくるのが、次のようなうたい文句だ。

 

  「もし、赤ちゃんが生まれた時点からお母さんが英語だけで話しかけていけば、二年後には必ず英語をしゃべる子どもに育つのです」

 

 そのとおりに違いない。日本人の子どもでも一〇〇パ-セント英語の環境で育てられたら英語を母国語とする子どもに育つだろう。国際結婚をした夫婦の子どもは、ある程度楽にバイリンガルとして育っていける。

 

 実際、子どもに父親は英語だけ、母親はスペイン語だけで話しかけ続け、バイリンガルどころか日、英、スペイン語を自由自在にあやつるトリリンガルに子どもを育てたという例がある。しかも、両親は国際結婚ではない。父親も母親もれっきとした日本人だ。彼らの育児記録は

 

 『ヒロシ、君に茶語とスペイン語をあげるよ』 (草思社)という本になっているが、その本からわかることは、子どもをバイリンガル、あるいはトリリンガルに育てあげるには、両親のなみなみならぬ決意とそれを継続する努力が必要だということである。

 

  『ヒロシ:この中に登場する両親は、お互いの会話は日本語でかかし、ヒロシ君が話しかけたときはお父さんは必ず英語で答え、お母さんは必ずスペイン語で対応している。必ず、早いうちから英語に親しめば、楽にそして自然に英語を覚えられるのではないだろうかといううのは文字どおり「必ず」、例外なしに、である。父親も母親もそれなりの語学力は持ってお られるにしても、生まれたばかりの赤ん坊に話しかけ続けていく言葉が、ご自分たちにとっての「外国語」なのである。かなりの努力を要したことだろう。それを毎日毎日「例外なし」に続けていくなど、子どもの就寝時刻にすらしょっちゅう「例外」を認めるゲータラママの私には、とてもしゃないが家船のできないことである。