感性で身につける英会話

 「アタマで覚える英会話より、感性で身につける英会話が、好きです」

 

 都内にある英会話学校のパンフレットに記されたキャッチフレーズである。どれどれ、と中身を見ると、

 

「たかが言葉なんだから。そんなラフな気持ちで楽しんで欲しいのです。だって言葉なんだから。自然に親しんでいくほうが確かなんです」などとある。

 

 「楽しいから身につく、○○の英会話です」というのがこの学校のふれ込みのようである。

 

 受講生のレベルチェックやフリータイム制のレッスン、プライベートカウンセリングに加えて、年に数回開かれる「外国人とのふれあいパーティー」などなどの特典はカイワレをふんだんに登場させた写真で引き立たせている。

 

 感性で身につける英会話、とはなかなかシャレたコピーだな、と、ヘンに感心されるパ

ンフレットである。

 

 ピアノ、スイミング、お習字というおけいこ事の「ご三家」に加え、英語も早い時期に、と乳幼児からの英会話学習をうたった教室が大繁盛している。学校で正式に英語を学ぶ中学に入る前の子どもで、英語を学んでいる子どもの数は全国で数十万人、あるいは八十万人、百万人を超えるとも言われている。いまや子どもを対象にした英語教育は、巨大なマーケットを形成しているのである。

 

 一説によれば、子どもが母国語を習得するように外国語を習得できるのは九歳までらしい。つまり九歳までは言葉を体で覚えられるが、その時期を過ぎると「アタマ」で、つまり理屈で覚えるようになる。さらに、成人してから習い始めた外国語にはどうしても発音や母国語のナマリが残るという。

 

 「アタマ」で覚える学校英語で苦労した世代が親になり、自分たちのような苦労はさせたくという思惑が、実は昨今の早期英語教育ブームを支えているのである。

 

 まだヨチヨチ歩きもできない赤ん坊をひざに抱いたお母さんたちがカイワレの先生を囲み、「マンデー、チューズデー、ウエンズデー、・……」と唱和する。一区切り終わると「イェーイ/・」と拍子。母親たちが赤ちゃんの子を持ち拍子をさせる。まるでお人形さんの手を持って拍手をさせているような風情である。これが、ゼロ歳児を対象としたある英語教室の光景であった。

 

 「語学を語学として受けとめる前に、音として英語を受けとめられるいまのうちに」

 

 「学校で英語を勉強するようになったとき、あ、これ知っている、という具合に親しみを持ってくれたら」

 

 入会の勤機をお母さんたちはこう語っていた。

 

 ちなみに、この英会話学校、入会金は一万円、月々の月謝は五十分週三回の授業で二万二千円。単に「英語に親しむ」のにも、かなりのコストがかかるというわけだ。

 

 語学学校の老舗ベルリッツでも、子ども向けのクラスを開講し始めた。お値段の方も老舗だ

けあって一レッスン七千円から七千八百円。週一回のペースで通わせるとして、一年間で一人四十万円近くの出費となる。

 

 確かに子どもは語学の天才である。早いうちから外国語に親しませることも決して悪いことではない。どうせ始めるのならば早い方がいいというのも本当のことである。