2014-06-10から1日間の記事一覧

バイエル社

サンデュロフは、FDAにはどんな乎を打つ予定があるのか、なにか方針があるとしても、いっさい触れなかった。そして冬が終わり、春が訪れても、獣医学センターの不可解な沈黙はつづき、とうとう、たがいにそれほど緊密な関係をもたない複数の消費者団体の…

アンピシリン、スルファメトキサソール、トリメトプリム

モリスは生来、非常に人当たりのよい男だが、こうした数字は彼を激怒させた。その午後、審査委員会が再開されるやいなや、モリスは獣医学センターの所長に食ってかかった。「あなたは、このNARMSの最新のデータをご存じですか?」モリスは尋ねた。「こ…

FDAの苦悩と決断

一九九九年十二月のある寒い日、グレンーモリスは、メリーランド州ボルティモアからロックランドのホリデイーインヘと一時間ほど車を走らせた。FDAは、いつもそこで聴聞会をひらくのだ。ホテルのものさびしい雰囲気で、うるさい出席者の意気を消沈させよ…

一九九八年、CDCのフレッドーアンギュロらは、アメリカ国内のわずかなDT104分離株のなかには、キノロン系に部分的に耐性をしめすものと、完全な耐性をしめすものがある、と断定した。四〇〇〇の分離株のうち、たった一株の完全な耐性の例など瑣末な…

ウシから採取した細菌

数日後、シンシア自身にも症状があらわれた。美容院で、寒気がし、胃にさしこむような痛みを感じた。横になってもいいかしらと頼み、気づいたときには起きあがれなくなっていた。母親と妹が迎えにきて、シンシアを車に乗せ、農場にもどった。二十四時間後に…

脱水症には塩類を含む液を

農場ではたらく人間も、やはり低温殺菌されていない牛乳を飮んでいた。ずっとそうしてきたのだ。しぼりたての牛乳を飲めるのは、この仕事の役得のひとつなのだから。だが時は流れ、微生物も変化をとげた。一九九七年春、カリフォルニア州の疫学者がメキシコ…

ワシントン州のヒスパニック

つぎにアメリカで発生した集団感染は、感染範囲がもっと広く、原因をもっと簡単に追跡することができた。一九九七年二月、カリフォルニア州バークレーの州立微生物疾患研究所の研究者が、サンフランシスコのベイエリア、サンタクララ郡からサンマテオ郡にか…

アメリカ

アメリカでは、キノロン耐性サルモネラDT104の出現は、報告されていなかった。だがヒトがDT104j五種類の薬に耐性をしめすサルモネラの菌株-に感染する割合は、すべてのサルモネラ分離株のなかで、一九九三年には○%だったものが、一九九六年には…

イギリス

彼女たちは、デンマークでDT104に感染し命を落とした初めての犠牲者たった。だが、ヨーロッパ全体では初めてではなかった。すでに一九九二年、ロンドンの公衆衛生研究所の研究者ジョンースレルフォールは、多剤耐性サルモネラDT104の発生率の上昇…

DT104の菌株のMIC

そのうえ、ヒトヘの感染の謎は深まるばかりだった。最初の報告が舞い込んでから数週間後、DTI04の二五件の菌株の培養菌が検査された。すべての菌株が豚肉のサンプルの耐性の特徴と一致した。だが感染者全員が、感染した豚肉を食べてはいなかった。ウェ…

食肉から伝播する耐性菌

だが、さすがのカーネヴァレも、イギリスから大西洋を越えて届いた奇妙な報告には仰天した。その報告は、サルモネラ菌の新種が出現し、しかも一種類でも二種類でも三種類でもなく、五種類の薬剤に耐性があるという内容で、微生物学的には青天の霹靂だった。…

国立獣医学研究所

EU加盟国からは非難の声があがった。スイスからは、アボパルシンの製造者である国際的製薬会社ロシュ社の怒りに満ちた手紙が、デンマーク人獣共通感染症センターに届いた。「禁止令をだそうものなら、家畜の健康に甚大な被害が及び、晨場主たちは破産に追…

科学的根拠

ウェグナーは、三十代前半でウェーブのかかった茶色の髪と緑色の瞳をもつ、痩せ型で長身の微生物学者で、軽装を好み、話している最中はつねに両手を動かしている。活気にあふれ、陽気な雰囲気をたやさないウェグナーだったが、成長促進剤には暗い将来を見て…

ヨーロッパで成長促進剤禁止

コペンハーゲンでは週末になると、郵便局の黄色い小型トラックが、デンマーク国立獣医学研究所に停まり、荷物をどっと降ろしていく。子ブクのほか、ウシの頭、ヒツジの肺など、さまざまな家畜の臓器が袋にいれられ、研究所の集積所に運ばれたあと、解剖室に…