サプリメント

 十二月十八日、イヴァンジェリンは退院した。左手の人差し指はひどく変形していたが、レイ医師の手術で切除されたのはほんの指先だけだった。イヴァンジェリンは、その人差し指を「信頼の指」と呼んだ。信頼、そして前向きな考え方が、自分の命を救ったのだと確信していたのである。それに、がんとの歴史をふりかえっていた。がんと直面してから、彼女は免疫力を高める特別なやり方を実践しており、毎朝、ウィートグラスのサプリメントを五錠飲んでいた。そして夜にまた五錠。イヴァッジェリッは、自分の強い免疫力が大きな役割を果たしたと信じていた。医師はまず、この考え方には不賛成だろう。医師は壊死性筋膜炎がなにかをよく承知しているし、どのように抗生物質を投与すればいいかも知っている。もちろん敵を追い込むには、抗生物質が強ければ強いほどいい。だが、なぜほかの人間より感染しやすい人間がいるのか、医師にもわがらなかった。それに、抗生物質がヒト食いバクテリアをやっつけるまでに時間がかかったにもかかわらず、どうしてイヴァンジェリンが試練に耐えて生き残ることができたのかも、わからなかった。