性行為感染症(STD)によるがん発症:学生の20%、ソープランド嬢の20%、ホステスの27%がクラミジア

 

子宮頸がんは、ヒトパピロマウイルス(HPV)によって発生する性行為感染症(STD)である。子宮頸とは、膣と子宮をつなぐ部分のことである。

 子宮内部にできるのが子宮体がんで、これはホルモンのバランスの崩れが原因で発生する。おそらく、過剰のホルモンが遺伝子にくっついて、成長因子としてはたらき、細胞の成長・増殖を暴走させ、子宮体がん発生の引き金を引くのである。

 もともとHPVはヒトにイボを発生させるウイルスだ。これまでに約100種類のHPVが発見されているが、そのうち、子宮頸がんを発症させるものは数種類にすぎない。

 とりわけタチが悪いのが、16型とIB型で、子宮頸がんや陰茎がん患者のほとんど全員で見つかっている。

 アメU力の疫学調査で、気がかりなことが1つ報告されている。それは、ペニスにイボのある男性と性交した女性の3分の1が、すでに前がん状態にあることだ。

がん状態とは、細胞が正常な成長・増殖のサイクルから離れはじめ、がん細胞に近づいている状態のことだ。要するに、がん細胞に変身する一歩手前であるから、要注意だ。

 それからもう1点。ペニスのイボはHPVの6型と11型によって発生する尖圭コンジローマなのに、なぜ、16型が女性に感染しているのかという疑問である。

 ペニスのイボのある男性は6型(または11型)を持つ。この男性と性交した女性にB型(または11型)が感染する。するとB型(または11型)が感染した女性の免疫力が低下して、16型(または18型)に感染しやすくなるのだろう。だから、ペニスにイボを見つけた男性は、ただちに専門の病院を訪ねて治療を始めるべきである。

 ある病原体に感染すると、それが手引きでもするかのように、別の病原体に感染しやすくなることがある。本書では、これを「誘導感染」と呼ぶことにする。ペニスにイボのある男性との性交によって女性が子宮頸がんになるのは、この典型である。

 誘導感染のもう1つの例は、HIVである。子宮頸がんと同じように、HIVもまた性行為感染症である。

 日本家族計画協会クリニック所長の北村邦夫によれば、都内の産婦人科を訪ねた15~19歳の4人に1人がクラミジアに感染している。また、江東病院の医師松田静治によれば、学生の20%、ソープランド嬢の20%、ホステスの27%がクラミジアに感染している。この病気にかかると、HIVに感染する可能性が4倍に跳ね上がることが知られている。

 理由はこうだ。感染したクラミジアを撃退するために、免疫系の指揮をとりにヘルパーT細胞が感染箇所にやってくる。内を隠そう、ヘルパーT細胞こそ、HIVが感染の標的とする細胞なのである。だからクラミジアに感染することは、HIVをわざわざ引き寄せているようなもので、危険きわまりない。国か国では少子化か叫ばれて久しい。要するに、夫婦に子どもがあまり生まれないという現象だ。結婚しても子どもを1人か2人しか生まないという選択が原因の1つだが、生みたくても生めない不妊症も要因になっている。

 クラミジア不妊症に一役買っているのだ。こういうことだ。クラミジアが女性に感染すると、子宮卵管炎や子宮頸管炎を引き起こす。これを治療せすに放置しておくと、炎症によって精子や受精卵の通り道である卵管が癒着して、不妊症となるのである。

 しかも、感染女性が運よく出産できたとしても、出産のときに、新生児が産道で感染し、結膜炎、咽頭炎、肺炎などの症状を起こすことが多いのだ。